貯蓄のパラドックス?個人が貯蓄しても社会全体では増えない!?分かりやすく説明。

経済学

こんにちは、みなさんは将来に向けて貯蓄をしていますか?

不景気で何が起こるかわからないから節約、貯金は大切と聞こえてきます。

今回は、個人の家計が貯蓄に努めても一国の貯蓄は増えない、「貯蓄のパラドックス」というおもしろい現象についてお話していきます。

経済は詳しくないから分からないという方も流し読みで見ていただけたら嬉しいです。

用語の確認

三面等価の原則 

生産面から見た国内総生産(GDP)、分配面から見た国内総所得(GDI)、支出面から見た国内総支出(GDE)は全て等しいという原則。

限界貯蓄性向:Cm

一単位所得が増加した際に、貯蓄にまわる割合のこと。

必要消費:C0

所得がない場合でも、生活するために必要な最低限度の消費。

例えば、あなたが職を失ってしまったとしても貯金を切り崩して生活をしますよね?
これが最低限の消費、すなわち必要消費になります。

 

 

貯蓄のパラドックス

貯蓄のパラドックス(paradox of savings)とは、個人で見た場合良いとされる貯蓄も、不況期には社会全体でみると悪い影響を与えてしまう現象です。

三面等価の原則を用いて簡単な数式で見ていきましょう。

国民総所得=国民総支出より

国民総所得 Y=Yd=C+I+G

(C:消費、I:投資、G:政府支出)

国民所得から投資と政府支出を引いたものが貯蓄に回され、これを国民貯蓄Sとおくと。

S=Y-C-G=I

∴S=Iとなり 一国全体でみると国民貯蓄投資が恒等的に等しくなることが示されます。

さらに、国民貯蓄S投資Iが常に等しいことから

ΔS=ΔI が導かれるので国民貯蓄Sは投資Iが一定の場合限界貯蓄性向にかかわらず一定となります。

ここで、貯蓄関数についてみてみましょう。

貯蓄関数は

S=-C0+Sm・Y (C0:必用消費、Sm:限界貯蓄性向)

と表されるのは良いでしょうか?

政府支出が一定と考えると、国民貯蓄は変わりません。

この場合に、限界貯蓄性向が増加(つまり家計が貯蓄を増やす)すると、必要消費も一定と考えられるので国民所得が減少してしまいます。

以上のことを少し整理してみましょう。

ケインズ理論では、国民貯蓄限界貯蓄性向にかかわらず投資と等しくなる。
さらに、投資が一定のもとで限界貯蓄性向が増加すると国民所得が減ってしまう。
個人が貯蓄を増やそうと努めても、一国全体の貯蓄は増えないため合成の誤謬に陥らないように注意が必要です。
合成の誤謬(fallacy of composition)
一部分(ミクロ)でみると真理であるために、全体(マクロ)についても真理であると誤って認識してしまうこと。
カッコ良い言葉なのでぜひ覚えたいですね!

まとめ

個人で見ると美徳とされる貯蓄ですが、社会全体として貯蓄は増えず所得の減少を招いてしまいます。

好景気時には需要過剰を防ぐことでプラスの効果を期待できますが、不景気時には経済状況をより悪化させてしまいます。

だからといって、急に消費を増やせと言われても難しいのが現状です。

今後、この不景気をどう乗り切るのでしょうか…


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